評価センター資料閲覧室

第12回 固定資産評価研究大会概要 固定資産税の行く手を考える

講演

「地方税をめぐる当面の諸問題」

 

 
  総務省自治税務局長
  河野 栄
 
 

はじめに
 おはようございます。自治税務局長の河野でございます。
 皆様方には、地方税の第一線で税務行政に、そしてまた税の関連事務にご尽力をいただいておりまして、まず御礼を申し上げたいと思います。
 本日は、40分時間をいただいております。非常に短い時間でありますので、少し急ぎながら、「地方税をめぐる当面の諸問題」全般につきまして、お話をさせていただきたいと思います。
 お手元に、少し資料を多目に持ってまいっておりますので、適宜ご参照いただきながら、また詳しく申し上げる時間ございませんので、時間のあるときにご覧をいただいたらと思います。

1.地方税収の動向等
 まず、資料1をご覧いただきますと、地方税収の動向をグラフにしてございます。平成3年度、バブルのピーク後、増減を繰り返し、低迷をしながら推移してまいっておりますが、平成15年度を底に、景気の回復と相まって、地方税収、増加しております。それから、19年度には三位一体の改革によりまして、3兆円の税源移譲が実現をしておりまして、そうしたことによりまして、19年度、20年度、大体40兆円の規模になってきております。地方財政の規模、決算でいいますと、90兆円超えておりますので、まだまだ地方税を充実していくという方向で努力していくことが必要であるわけであります。
 資料2をご覧いただきますと、地方税の構造を帯グラフにしてございます。国税は、ご覧いただきますように、非常にバランスよく、所得税、法人税、消費税で構成されております。一方、地方税につきましては、個人住民税が約3割、それから法人二税が約4分の1、24%程度、それから1つ飛んで固定資産税が2割強と。これが大宗を占めておりますけれども、消費税、地方消費税が1%分でございまして、構成比としては6.2%、まだ小さい割合にとどまっております。
 それから、都道府県と市町村で見ますと、特に都道府県におきましては、法人二税のウエートが非常に高いということから、税収としてやや不安定さがある。そしてまた、近年大きな課題になっておりますけれども、どうしても大都市地域に税源が集中しやすいと、こういう問題がございます。
 今後の地方税のあり方を考える上では、地方税全体の量を増やしていく、地方税源を充実していくこととあわせて、できるだけ偏在が小さくて、そして税収も安定している、こういった地方税体系を目指していくということが、私どもの基本的な課題であります。

2.地方分権と税源配分
 そうした課題にどういうプロセスで取り組んでいくかということでありますけれども、現在、政府におきまして、いわゆる税体系の抜本的改革に取り組むという課題があります。
 資料3をご覧いただきますと、これは20年度の与党の税制改正大綱、それから、いわゆる骨太方針2008、両方抜粋してありますけれども、この中で、いずれも「消費税を含む税体系の抜本的改革について、早期に実現を図る」というふうに言及をされております。
 数年来、この税体系の抜本的改革については、平成19年度をめどに実現するということが、政府あるいは与党の方針であったわけでありますけれども、昨年の参議院選挙を経まして、与党が多数を失ったということから、具体的な時期を明示せずに、こうした「早期に実現を図る」課題というふうに位置づけられているわけであります。
 この消費税を含む税体系の抜本的改革がなぜ必要かという背景でありますが、これは申すまでもなく、我が国は、地方、国を通じて、非常に大きな財政収支の不均衡にあります。
 資料4をご覧いただきますと、これは国・地方の長期債務残高の推移を表にしてございますけれども、一番下から2列目をご覧いただきますと、20年度末で、国・地方合わせて800兆円近い債務残高を抱えている。そして、GDPに対して約150%ぐらいの大きな水準の債務を持っていると、こういうことになっております。
 これは国際比較をしてございませんけれども、国際的な情勢を申し上げますと、統計のとり方がSNAベースで比較しますので、数字が多少違いますけれども、我が国は、この国際的な統計では、一般政府のSNAベースで捉えて、GDP比170%の債務を抱えているという計算になっております。
 かつて世界の借金大国と言われたイタリアが、現在、少しずつ、その水準を下げてきて、約117%程度の数字になっておりますので、これを大きく離して、世界の借金大国になっている状況にあります。
 また、アメリカですとかイギリス、ドイツあたりは、大体50%から60%台の水準でありますので、世界の中でも群を抜いた借金大国ということであります。
 こうした実情にどう取り組んでいくかということでありますけれども、資料5に、骨太方針2006につけられた歳出改革の資料をのせております。これは、骨太方針2006におきまして、まず2011年度に国・地方の基礎的財政収支――いわゆるプライマリーバランスと言っておりますけれども、借金を返す歳出を除いた歳出と、それから借金を除く歳入、これがバランスしているかどうかというのが、いわゆるプライマリーバランスでありますが――当面、これを2011年度に黒字化しようということで取り組むことにしておりまして、そして、その次に、2010年代初頭から2010年代半ばにかけて、債務残高GDP比の発散を止めて安定的に引き下げようと、こういう方針を打ち出しているわけでありますけれども、その際の試算が、この資料5でございます。
 このときは、2011年度、自然体で行った場合のプライマリーバランスを回復するための要対応額、これが16.5兆円と試算されておりまして、そのうち、削減額というところにありますように、歳出削減努力でどこまで削減可能かということを、一定の幅を持って示されておりまして、14.3兆から11.4兆円の歳出削減を行っていく、そして、残りは歳入等で対応していくと、こういう方針を2006年度に決めているわけであります。
 この時点での試算では、2011年度に、こういった努力によってプライマリーバランスの回復が可能という試算であったわけでありますけれども、その後の経済情勢、非常に厳しく推移しておりまして、特に昨今、足元の経済情勢、大変不安定になっておりますので、最近の試算では、こういう努力では、なかなかプライマリーバランス黒字化の達成はできないという状況になってまいっております。
 一方で、この資料6に、我が国の租税負担等の状況はどうなっているかというのを国際比較をつけております。我が国の租税負担と、それから社会保障負担を合わせた国民負担率、大体40%ぐらいの数字になっておりまして、アメリカ以外の国と比べますと、非常に低い水準になっております。
 アメリカという国は、租税から見ますと、やや特殊な国でありまして、国自体の構成が非常に若いということもありますし、それから社会保障が、他の諸国と比べると、非常に私的セクターに委ねられておりますので、公費負担が少ないということもありまして、特異な国になっております。
 アメリカを除きまして、我が国の租税負担率あるいは国民負担率というのは、国際的に見て、非常に低い状況にあります。一方では、先ほどのように、多額の長期債務残高を抱えている。
 そして、この資料で、消費課税のところに表れますけれども、大体、EU諸国の消費税、付加価値税の税率というのは、平均して19%ぐらいの数字になっております。これに対して、我が国の消費税率は、国・地方合わせて5%でありますので、EU諸国等と比べると非常に低い水準にあるということで、こうした状況から、消費税を含む税体系の抜本的改革は避けられない課題になっているわけであります。
 こうした消費税を含む税体系の抜本的改革、昨今の政治状況の中で、具体的にどういう議論が進むのか、非常に見極めにくい不透明な状況にありますけれども、例えば、現在、政府与党におきまして、第二次の経済対策というのを検討しておりまして、その中でも、総理からは、持続可能な社会保障の構築と、その安定的財源の確保に向けた中期プログラムを早急に策定するといった指示もありますので、年末の議論の中で、一定の進捗はあるのであろうと理解をしております。

3.地方分権と税源配分
 こうした税体系の抜本的改革が進められる一方で、資料7にありますように、地方の税制に関しましては、現在、地方分権改革というプロセスが進んでおります。これは、下のほうに地方分権改革推進法というのを抜粋で挙げておりますけれども、Tにありますように、地方分権の推進に向けて国・地方の役割分担を見直していこうということと、それからUにありますように、それを前提にして補助負担金、交付税、それから国と地方公共団体の税源配分等の財政上の措置の在り方について検討するということで、それを踏まえた骨太方針が、上のほうに掲げてあるような形で決定をされておるところであります。
 このスケジュール観でありますけれども、資料8をご覧いただきますと、既に5月に第一次勧告がなされております。現在、国の出先機関の見直し等についての議論が進められておりまして、年内には二次勧告がなされる予定であります。そして、こうした勧告を踏まえて、来年に入ってから、これは税財源等に関する第三次の勧告というのを予定されておりまして、こうした地方分権改革のプロセスを通じて、また国と地方の税源配分等についても一定の言及、勧告がなされることになろうと思いますので、こうした地方分権改革のプロセス、それから消費税を含む税体系の抜本的改革のプロセスという二つのプロセスを通じて、地方税の大きな課題に取り組んでいきたいと考えているところであります。
 ただ、この二つの改革のプロセスが、具体的にどういうふうに絡み合っていくのか、あるいはどういうふうに前後していくのか、なかなか、現在では見通しにくいところがありますけれども、いずれにいたしましても、こういった二つの過程を通じて、ぜひとも地方税の充実等の課題に取り組んでいきたいと考えております。
 そして、その具体的な課題でありますけれども、資料9をご覧いただきますと、一つは、地方税源そのものを充実していくという課題があります。現在、この資料にありますように、国と地方の税源の配分、国が6、地方が4となっております。一方で、歳出で見た国と地方の分担は、逆の4対6になっておりまして、こうした状況を踏まえて、当面、国と地方の税源配分について1対1という目標を掲げて、その実現に取り組んでいくということにいたしております。
 同時に、資料10をご覧いただきますと、その際には、一つには税収が安定的であること、そして偏在性が小さい地方税体系をつくっていくという課題がございます。ここは、人口一人当たりで税収の偏在度を比べておりますけれども、ご覧いただきますように、真ん中にあります法人二税、これは非常に大都市に集中しやすい構造がございます。一方では、地方消費税、これは、消費というのは、それほど地域によって大きな差はありませんので、非常に偏在性の小さい税であるということが見てとれます。
 こうした中で、将来の地方税体系の方向としては、一方では地方消費税の充実を図っていく。そして、一方では、法人二税については、国と地方の法人課税の配分の見直しも含めて見直しを行いながら、できるだけ全体として偏在性が小さい体系を目指していくということになるわけであります。
 同時に、資料11、これは税収の変動状況を見ておりますけれども、地方消費税は、税収としても非常に安定をしている。一方、法人二税につきましては、非常に景気に左右されやすくなっております。地方団体の歳出構造は、かつては景気対策も含めて投資にウエートを置いておりましたけれども、最近では、特に社会保障でありますとか、教育でありますとか、そういった安定的な財源を必要とする仕事にウエートがシフトしておりますので、できるだけ安定性の高い地方税体系に持っていくことが必要であるということで、こういう面からも、地方消費税の充実を図る一方で、法人課税については見直しをしていくことが基本的な方向性になろうと思っております。
 そうした考え方につきましては、資料12にご覧いただきますように、昨年、税制改正の過程で、抜本改革そのものは見送られたわけでありますけれども、その中で、特に地方税の偏在の問題が大きな議論になりました。そして、その際にいろいろご議論いただきまして、これは閣議決定の文章を抜粋しておりますけれども、ほぼ同じ文章が与党の税制改正大綱にも記述されておりまして、ここの上の4行にありますように、地方税制の基本的な改革方向として、「更なる地方分権の推進とその基盤となる地方税財源の充実を図る」ということをうたいながら、「地方消費税の充実を図るとともに、併せて地方法人課税のあり方を抜本的に見直すなどにより、偏在性が小さく税収が安定的な地方税体系を構築することを基本に改革を進める」と、こういった大きな方向性を確認をしているわけであります。そして、来るべき抜本改革の中では、こうした方向の実現に取り組んでいこうということを、あわせて決定をしているところであります。
 なお、昨年末におきましては、こうした大きな方向性を示しながら、当面の課題であります地域間の財政力格差、地方税の偏在の問題につきましては、下の3行にありますように、また、資料13に図にしておりますけれども、地方法人課税のうち、法人事業税の一部、地方消費税の1%に相当します2.6兆円を「地方法人特別税」 という形で分離をしまして、これを人口と従業者数を基準に譲与する譲与税という形で地方団体に配分をして、地方消費税の充実は実現に至りませんでしたけれども、結果的に、法人事業税と消費税の同額、1%相当分を交換したと同等の偏在是正効果が生ずる、そういった暫定措置を講ずることにしたところであります。
 この暫定措置は、あくまでも、先ほど申し上げた大きな方向性に沿って、抜本改革までの間の暫定措置ということで講じているところでありますので、この消費税を含む税体系の抜本的改革の中で、この措置につきまして、発展的に解消して、より望ましい地方税の体系をつくっていくと、こういうことになるわけでございます。

4.道路特定財源等
 それから、次の課題に移りたいと思いますけれども、もう一つ、地方税制の当面の大きな課題といたしまして、道路財源の問題があります。資料14に、5月に閣議決定されました「道路特定財源等に関する基本方針」というものを抜粋、掲げております。経過についてのお話は省略いたしますけれども、国会での議論の中で、福田前総理が道路財源の一般財源化についての提案をされ、それが最終的に政府与党の決定を経て閣議決定をされているわけであります。この中で、2のところにありますように、「道路特定財源制度は今年の税制抜本改革時に廃止し21年度から一般財源化する」、そして、その際には、「地方財政に影響を及ぼさないように措置する」ということが決定されております。
 また、右の3にありますように、暫定税率分も含めた税率については、「環境問題への国際的な取組み」等々を踏まえて、「今年の税制抜本改革時に検討する」ということになっておりまして、いずれにしても、今年の税制抜本改革といいますか、年末の税制改革時に、これについての具体的な答えを出していくということになるわけであります。
 まず、資料15をご覧いただきますと、道路財源の現状でありますけれども、右に囲ってあります中に数字がございますが、国・地方合わせて5.4兆円、いわゆる道路特定財源があります。
 このうち、地方の道路特定財源が約2.1兆円、それから国が約3.3兆円となっておりますけれども、国の財源のうち、左のほうに囲ってあります地方道路整備臨時交付金でありますとか補助金等の形で、地方にさらに財源が移転されておりまして、最終的には、5.4兆円のうち3.3兆円が地方の道路財源になっているという構造になっております。
 したがって、この問題は、地方のほうに非常に大きな影響があるわけであります。こうした中で、資料16にございますように、実は、地方の道路財源というのは、こういうふうに3.3兆円ありますけれども、実際の道路関係の歳出に対しては、都道府県で、補助金等を合わせても4割程度、市町村では3割強ぐらいの数字にとどまっておりまして、全体として足りない状況になっております。
 したがって、今後、一般財源化の議論がされていくわけでありますけれども、特定財源という構成は変わるにしても、こうした状況をよく踏まえまして、地方税財源の総額についてはちゃんと確保していくということが、その際の課題になるわけであります。
 それから、同時に制度面であります。資料17に、地方税と譲与税の制度的なものを資料にしております。
 まず、税率のところをご覧いただきますと、地方の道路財源、地方税と地方譲与税のうち、石油ガス譲与税を除いて、すべて暫定税率が上乗せされております。当面、これをどういうふうに考えていくかということになるわけであります。一般財源化されていきますので、今、目的税になっているものの課税の趣旨、根拠等もあわせて考えていく必要がありますけれども、例えば、ヨーロッパにおきましては、環境税といった形で、こういった炭素の排出源に税をかけるといった取り組みが行われておりまして、地球温暖化というのは大きな国際的な課題でありますので、そうした環境に与える影響等も含めて検討していくことになろうと思います。
 ご参考までに、資料18、あるいは19をご覧いただきますと、これはガソリンと、それから自動車関係諸税の負担状況を国際的に比較した資料を入れております。我が国のガソリン、最近、非常に値段が上がってはおりますけれども、ここにご覧いただきますように、国際的な水準から見ますと、税に関して特殊な国でありますアメリカは別にしまして、非常にガソリンの値段も安い、そして税負担も小さいという形になっております。これは、地方税であります軽油についても同様の状況でございます。
 これは、一つには消費課税もありますけれども、先ほど申し上げたように、諸外国では、環境税的な観点から、炭素税という形で、炭素の排出源に課税がされているということがあるわけであります。
 同じように資料19でありますけれども、これは一定の前提を置いて、自動車関係諸税の負担状況を国際比較をした資料ですが、日本には、種類としてはいろいろな税がありますけれども、総体として見て、自動車関係諸税の負担というのは、諸外国と比べると非常に軽いという状況にありますので、こうした状況も念頭に置きながら、暫定税率等のあり方について議論をしていくことになろうと思います。
 それから、資料20、21に法令の引用を入れております。自動車取得税、軽油引取税、いずれも地方税法で目的税とされております。道路に関する費用に充てるために課税をする。
そして、道路に関する費用に充てなければならないといったことが法定されているわけであります。
 また、資料21は地方譲与税でありますが、いずれも道路に関する費用に充てなければならないというふうに縛りがかかっているわけでありますけれども、一般財源化という大きな趣旨を踏まえて、こうした制度は見直しを検討していくことになろうと思っています。
 当然、その際には、課税の趣旨・根拠について、先ほどの税率とあわせて、ユーザー、税の負担者の理解が得られるような枠組み、構成について、しっかり検討していくということが必要になるわけであります。

5.自動車関係諸税、税制のグリ ーン化
 なお、資料22にご覧いただきますように、この道路財源にも関連をいたしますけれども、自動車関係諸税、我が国では非常に税の種類が多いということで、これを簡素化するべきであるという議論が、かねてからあります。
 ここにありますのは、昨年末の与党の税制改正大綱でありますけれども、そうしたことも踏まえて、今後、そのあり方を総合的に検討するということが一つの課題になっておりますので、税制の抜本改革時には、自動車関係諸税の簡素化といったことも議論の対象になってまいろうと思っております。
 それから、さらに資料23でありますけれども、税制のグリーン化という課題が、また新しく出てまいっております。これは、環境サミットの前に、福田前総理が環境関係の福田ビジョンというものを打ち出されたわけでありますけれども、その中で、ここにありますような「税制のグリーン化」という課題について言及をしておりまして、一番下のところにありますけれども、これは閣議決定された文章でありますが、本年秋の税制抜本改革の際には、「道路財源の一般財源化後の使途の問題にとどまらず、環境税の取扱いを含め、低炭素化促進の観点から税制全般を横断的に見直し、税制のグリーン化を進める」といった課題が取り上げられているわけであります。
 この税制のグリーン化は、炭素の排出源に対して、基本的には税負担を重くして、その排出を抑制するということであります。現在、自動車税、これは基本的には排気量比例になっております。そうした意味で、ある種のグリーン化の構造にはなっているわけであります。また、自動車税でありますとか、自動車取得税につきましては、低燃費車に対する優遇措置等も、いろいろ実施をしておりまして、一定の措置はされているわけでありますけれども、こういったものを今後どういうふうに取り扱っていくかといったことが検討課題になってまいろうかと思っております。

6.法人所得課税関係
 それから、若干急ぎますけれども、次に法人所得課税についての問題でございます。資料24、25に関連資料2枚入れておりますけれども、当面、大きな議論の対象となりますのは、いわゆる法人課税の実効税率のあり方の問題でございます。これは、企業の活動が国際化をする、そして国際的な競争が激化するという中で、できるだけ、その競争力を強化するために、法人課税を国際的な水準にそろえる、あるいはできるだけ国際競走の中で有利にしようという議論であります。
 資料25をご覧いただきますと、これは地方税、法人二税だけの実効税率でありますけれども、中期的に見て、順次引き下げてまいっております。特に平成11年度、これは恒久的減税が実施された年でありますけれども、当時の国際水準をにらみながら、国税とあわせて引き下げをしておりまして、それが基本的に現在の水準になっておるわけであります。
 ただ、一方で、資料24にご覧いただきますように、我が国の国・地方を合わせた法人関係税の実効税率、大体40%の水準でありますけれども、こうした水準に現在ありますのは、アメリカぐらいであります。11年度に見直した当時は、ドイツが大体この水準にあったわけでありますけれども、ドイツはごく最近、先ほど申し上げた国際競争の観点から、法人税率等を大きく下げておりまして、ドイツでありますとか、イギリス、フランス、30%ぐらいの水準になっております。
 またさらに、アジア諸国はもっと低い数字にありまして、こういったことも視野に入れて、経済界を中心に、実効税率を10%程度引き下げるべきだと、こういう声が強まってまいっております。
 ただ、この問題につきましては、一つには、単純に表面税率の問題だけではなくて、課税ベースを含めた検討が必要でありますし、政策的な特例措置をいろいろ講じておりますので、それとどっちを優先していくのかといった観点からの検討も必要であります。また、さらには、諸外国におきましては、企業の社会保険料等の負担の状況が随分異なっておりまして、そうしたものも含めた検討をしていくということが必要だろうと思っております。
 また、あわせて、よく法人課税の実効税率を議論する際に、日本では地方税が高いから、地方税の課税をやめるとか、あるいはこっちを下げろという議論があるわけでありますけれども、あくまで、国と地方のこの課税の配分というのは、国内の国と地方の仕事の配分、分担に応じて決めていくわけでありますので、私どもは、あくまで、国際的な比較というのは、この
国・地方合わせた水準を比較をして、そして、国・地方の配分のあり方については、これは国内的な国と地方の責任分担を踏まえて議論していけばいいということで臨んでいるところであります。
 当面、この法人課税の問題が、すぐ具体的な議論になる可能性は小さいとは思っておりますけれども、いずれ、税の議論が進む中で、中期的にこういった課題が具体的に議論されていく可能性はあるだろうと思っております。
7.個人所得課税関係
 それから、先を急いで恐縮でありますけれども、個人所得課税について幾つか申し上げたいと思います。資料26であります。個人住民税につきましては、最初にも申し上げましたけれども、三位一体の改革によりまして、国庫補助負担金、それから地方交付税、地方税、これを一体で見直そうという改革の結果といたしまして、所得税から住民税へ3兆円の税源移譲が行われております。同時に、税率構造、この上に図にありますように、従前の累進構造から、住民税については完全に比例税率化をするということで、応益的な性格を強めている。同時に、偏在性の是正にも資するような形で、税率構成の見直しを行っておるところであります。
 また、下の表でご覧いただきますように、この税源の移譲によりまして、移譲前は、大体の所得階層で、所得税の負担のほうが大きくて、住民税の負担が小さいということであったわけでありますけれども、移譲後でご覧いただきますと、非常に高額の所得者を除きまして、大半の所得階層において、住民税のほうが税額が大きいという状況になっております。今後の個人住民税のあり方を考える上では、こうした比例税率化によって応益性を強めているということ、そして所得税よりも大半の階層で税負担が大きくなっているということを踏まえて、検討していくことが必要だろうと思っております。
 同時に、納税者から見て、所得税よりも住民税が大きいということでありますので、これは行政の信頼を得るためにも、税務行政の運営をきちんとやっていくことが、より重要になってきているわけであります。
 それから、資料27をご覧いただきますと、当面の住民税の課題といたしましては、昨年の税制改正の中で、年金から特別徴収するという仕組みを導入することを決定をいたしております。これは、具体的には、来年の10月支給分からということでありますけれども、ご案内のように、後期高齢者医療制度をめぐりまして、特別徴収制度について、いろいろな議論がされております。この住民税からの特別徴収の仕組みそのものは、別に税負担が増えるわけではありませんし、その趣旨も、市町村の徴収事務の効率化をするということもありますけれども、年4回、足を運んで、窓口等で納めていただいている高齢者の納税の便宜を図るという趣旨で実施するものでありますので、私ども、こうした趣旨をよく丁寧に周知・広報し、円滑に実施できるようにしていきたいと思っております。
 それから、住民税につきましては、資料28から3枚ほど資料をつけておりますけれども、昨年の税制改正におきまして、寄附税制につきまして、大きな改正を行っております。
 資料30から先にご覧いただきますと、所得税と住民税を、対比してございますけれども、住民税は、いわゆる地域社会の会費であるという性格を持っておりまして、所得税の寄附控除の対象と比べますと、非常に限定をした取り扱いをしてまいっております。従前、都道府県・市区町村に対する寄附金と、共同募金会と日赤、この三つだけが控除の対象になっていたわけであります。これにつきまして、一つには、いわゆる、ふるさと納税の観点から、市区町村あるいは都道府県に対する寄附金について、大きく拡充をする。そして、その他のものについても、条例で対象寄附金を指定する仕組みを新たに導入するという改正を行ったところであります。
 資料28をご覧いただきますと、いわゆる、ふるさと納税の議論からでありますけれども、都道府県・市区町村に対する寄附につきましては、控除の方式を、従前の所得控除から税額控除に改めて、そして一番下にありますように、適用の下限額も大きく引き下げまして、その上で、真ん中のちょっとわかりにくい表現になっておりますけれども、適用下限を超えた額の一定の限度まで、大体、個人住民税の1割強ぐらいを限度にして、所得税と合わせて全額控除される、こういう仕組みを、新たに導入をいたしております。
 こうしたことで、私ども、寄附の活用が促進されることを期待しているわけであり、市町村あるいは都道府県で、いろいろな取り組みをいただいております。それぞれの工夫でやっていただくべき問題でありますけれども、寄附される方に、どういうふうに活用されるか、あるいは活用されたかということが、しっかりと情報提供されることが大事であろうと思っております。
 それから、もう一つ、資料29のほうでありますけれども、公益法人等に対する寄附につきまして、従前、先ほど申し上げたように、共同募金会と日赤支部だけが対象であったわけでありますけれども、いろいろな公益法人あるいはNPO等で、地域に大きく貢献する活動をしている団体は多々あるわけであります。そうしたものにつきまして、国のレベルで、すべて法律で規定するということではなくて、地方公共団体において、その地域における住民の福祉の増進に寄与するかどうかということを判断をしながら、条例で指定をしていただいて、そして寄附金控除の対象になる、こういった仕組みを新たに導入したわけであります。これは、活用の仕方によっては、我が国の寄附文化の醸成でありますとか、あるいは、いわゆる官と民の協同、そういった観点からも大変大きな意義が出てくるのではないかと思っておりまして、今後の活用を期待をしているところでございます。
 それから、なお、資料31に、住民税の当面の課題といたしましては、これは8月の緊急総合対策、経済対策の抜粋を掲げておりますけれども、この中で、いわゆる定額減税を実施するという方向が決まっております。これは、平成10年度に定額減税――定額減税といいますのは、できるだけ低所得者の方にも手厚くなるように、本人幾らあるいは扶養親族幾らという定額で減税する額を決めてやる方式でありますけれども――こういった方式でやろうということが一応決定をされております。ただ、その規模・実施方式等については、財源を勘案しつつ、年末の税制抜本改革時にあわせて検討するということになっております。
 また、昨今の経済情勢を踏まえまして、現在、二次対策の議論が進められておりまして、その中でも、さらに、この問題についての検討がされているところであります。
 いずれにいたしましても、これにより地方税への影響が出てくるということになりますと、当面の地方団体の財政面へ影響が出てまいりますので、この規模等を勘案しながら、そうした影響につきましては適切な手当をしていくということが課題になるものと考えております。
8.固定資産税関係
 それから、固定資産税であります。資料33を ご覧いただきますと、固定資産税は、21年度は 評価替えの年になっております。その中で、評 価替えにあわせて、いわゆる負担調整措置とい うものを講じてまいっております。これは、平 成18年度に講じた新たな負担調整措置の仕組み でありまして、基本的には、負担水準に応じて なだらかに税負担を調整するという中で、低い ところにつきましては評価額の5%相当額課税 標準額を上げていくという仕組みをとっており ます。これによって、できるだけ負担の均衡化 を促進しようという考えで、現在の措置ができ ているわけであります。今回の評価替えに当た りましても、現在のこういった枠組みの考え方 を踏まえながら、さらに、最近の地価動向、こ れは、大都市圏では上昇している一方で、地方 圏では引き続き下落しているという状況にあり ますので、そうした二極分化の状況を踏まえて、 21年度以降の負担調整のあり方について検討 してまいりたいと思っております。
9.地方税の電子化・徴収対策
 それから、もう一点申し上げておきますと、今後の地方税の大きな課題として、地方税の電子化があります。国税につきましては、いわゆるe−Tax、相当、基盤整備ができてまいっておりますけれども、地方税につきましては、まだまだ、今後の課題のほうが大きい状況にあります。現在、eLTAXという仕組みを、地方税電子化協議会という社団法人を通じて運用しておりまして、これは、ここに下に図がありますけれども、電子化協議会が運営するポータルセンタを通じて、一括申告をして、そこで個別の県や市町村に配信をしていく形で、非常に簡易な効率的な申告ができるようにしようという仕組みでありますが、現在運用しておりますのは、上のほうにありますように、都道府県・政令市にほぼ限られております。
 また同時に、資料35にありますように、その対象税目等も、法人関係税を中心にしたものになっておりまして、今後の大きな課題としては、一つには、一般の市町村を含めて、全市町村、全都道府県に行き渡るように拡大をしていきたいということ、そして、対象税目や対象事務を、是非ずっと広げていきたいと考えております。
 当面のスケジュールといたしましては、既に給与支払報告書の提出が電子化されていますが、加入団体が少ないために、なかなか効果が発揮できていない、これを拡充していく。それから、先ほど申し上げた公的年金等の受給者についての特別徴収の仕組み、これは、このeLTAXの仕組みを通じまして、電子的な手法で、年金支払者と市町村の間の情報のやりとりをすることを予定しておりまして、こういったことを通じて、是非、eLTAXの仕組みの拡大を図っていきたいと思っております。
 それから、現在、所得税の申告データは、市町村が税務署に行って、コピーをとって持って帰る、こういう手間暇かかることをやっておりますけれども、こうしたものも電子的に、この仕組みを通じて分配できるようなしくみ、これを将来、是非、実現していきたいということで、具体的な検討に入っているところであります。
 最後に、地方税の滞納状況や徴収の取り組み、書いてございますけれども、最近、経済情勢が回復してきたこともありまして、地方税の滞納額、若干減ってまいっております。都道府県や市町村でも、いろいろな努力をいただいておるところでありますけれども、やはり、地方税の規模が大きくなる、そして地方税の重要性が増してくるわけでありますので、当然、歳入の確保という観点からも、この適切な徴収の確保ということが大事でありますし、あわせて、税の賦課徴収を適正にやっていく、公正に執行していくことが税務行政、ひいては地方行政への信頼につながるわけでありますので、こういった取り組みも、是非、よろしくお願いしたいと思っております。
 大体いただいた時間、ちょっと超過いたしましたけれども、以上で終わらせていただきます。どうもありがとうございました。